身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
(なんて、横暴だろう。病にかかるのは仕方ないのに)

 リビアが重症の患者を付きっきりで看病してるのを知らないわけではないだろう。勝手わがままなカイゼルに腹が立ってきて、エリシアが顔をあげた途端、ビクターがこちらを見た。

 目が合うとビクターは、あっ、と声にならない声をあげた。初めて出会ったあの日のことを彼は覚えているようだ。

 それなら、話ができるかもしれない。エリシアが口を開こうとしたとき、グレゴールが苦し紛れな声を絞り出す。

「……殿下、申し上げます。我がノアム大聖堂には、リビア様ともうひとり、聖女がおります」

(もうひとりの聖女ですって?)

 エリシアは耳を疑ったが、カイゼルも同じだったようだ。わなわなと唇を震わせ、怒鳴りつける。

「そのような話は聞いていない。俺をたばかるつもりかっ」
「いえ、そのようなつもりは決してございません。正式な儀式は済ませておらず、王宮への報告はしておりません。しかし、今や、リビア様がお認めになっている聖女でございます」
「リビアが認めただと? ……面白いではないか。すぐにその聖女とやらをここへ連れてこい」

 スッと怒りを鎮めて挑戦的な笑みをカイゼルが浮かべると、グレゴールはゆっくりと振り向き、エリシアの方へ腕を伸ばす。

「新たな聖女は、ここにおります。彼女は、名をエリシア・オルティスと申します。エリシアが触れた患者は、還炎熱を再燃することなく過ごしております。それは、ここにいる誰もが証明できる事実でございます」

 ビクターはびっくりした顔をして、エリシアを眺める。エリシアも、彼に負けないほど驚いた顔をしていただろう。

 あまりの衝撃で言葉が喉につかえ、口をぱくぱくさせてしまうエリシアを、カイゼルの鋭い視線がにらみつける。

(還炎熱の再燃患者がいないのは事実だけど、絶対……疑ってるわ。どうしよう)

 エリシアがきょろきょろと周りを見回したとき、患者のひとりが声をあげた。

「そうだっ。司祭様の言う通りだ。彼女は奇跡を起こす聖女様だぞっ!」
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