身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
 それを聞いた途端、エリシアはカイゼルと顔を見合わせた。

「なに、エリシア、何かある?」

 マルナは何かまずいことを言ったのではないかとほおを強張らせたが、カイゼルはすぐにサイモンに尋ねる。

「もしかして、ほかの者たちも還炎熱を再燃していないか?」
「はい、そうでございます。私も再燃を懸念しておりましたが、今のところは誰一人として……」
「リビアはどうだ?」
「リビア様は奥の部屋で眠り続けております。ルーゼに何か? ルーゼは大広間で使っておりますので、リビア様には届いておりません。いえ、私もあの香りがルーゼだと、いま知ったところです。ただ、患者の楽しみになっているならそれでよいかと黙認を」
「わかった。もう良い。おまえたちは仕事に戻れ」

 カイゼルは手を振ると、焦るサイモンにそう言いつける。サイモンはすぐにエリオンたちに中へ戻るよう促した。ルルカはまだおしゃべりしたそうに何度も振り返ったが、マルナに腕をつかまれたまま戻っていった。

「さあ、ビクター、これでルーゼを調べないわけにはいかなくなったな。フェルナ村へはどのぐらいかかる?」
「馬車でも半日もかからずに着けるかと」
「そうか。では、必要な従者を連れ、このまま行こう。エリシア、フェルナ村へ着いたら、グスタフの仕事場へ案内してくれ」
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