身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
「ルルカ、そういう話はあとで」

 マルナがますますあきれる中、エリシアは驚いて、ルルカの手を取る。

「それ、本当?」
「うん、本当だよ。私、看病の腕があるかも。みんなにも、いっつも明るく笑ってるから元気出るって言われるんだよ」
「私は冷たいって言われるけど、看病は得意よ」

 キャッキャと笑うルルカの横でマルナがつぶやくから、エリシアは思わず笑ってしまう。

「マルナは冷たくないよー。ちょっと素っ気ないだけ。でも、みんなの様子を一番わかってるし、頼りになるんだよ」
「うん、わかる。ルルカとマルナで、うまく役割分担できてるんだね」
「そうそう、それー」
「おまえたちはいつもそんなに騒がしいのか」

 カイゼルが鋭い声を発すると、さすがのルルカも一瞬青ざめて口をつぐむ。

「まあ、よい。様子は今の話でよくわかった。三人には引き続き、看病に従事させるように。ああ、それと、ルルカ……いや、マルナと言ったな。おまえはルーゼの香水を持っているか?」

 カイゼルはルルカに話しかけようとしたが、苦手なのか、話が長くなると判断したのか、マルナに尋ねた。

「ルーゼ……ですか?」

 マルナは警戒したが、エリシアが口を挟む。

「殿下は何もかもご存知なの。私が渡した香水、まだ持ってる?」
「あるわ。宮殿へ行く前、エリシアが小瓶に少し分けてくれたでしょう? 毎日使ったらすぐになくなってしまうから、どうしたら長持ちするかしらって、エリオンさんと相談したの」
「それで?」
「アルナに一滴垂らしたものを白布に浸して、香炉で焚くことにしたのよ。大広間のあちこちに置いたら、みんな、いい香りがするって評判がいいの」
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