それは麻薬のような愛だった
ちらりと伊澄を見やると、特に落ち込んだ様子は無い。元々喜怒哀楽を激しく表に出すタイプでは無いが、幼馴染として心の機微は他人より感じ取れる自負があった。
「いっちゃん、大丈夫?」
少なからず裏切りは辛いものだろうとそう問えば、伊澄は間延びした声を発した。
「あー…まあ、別に」
「別にって…」
「前から俺の気持ちが分からないだの言われてたし、漠然とそうなる気はしてたから」
「そんな…でも、」
彼女は何を期待していたのだろう。伊澄はそんなに愛情表現を大っぴらにする人じゃないなんてこと、付き合う前から分かってたんじゃないのか。
例えそれで伊澄に落ち度があったとて、浮気なんてあんまりだと思う。
どう言っていいか言葉に詰まっていると、ふと伊澄の足が止まる。いっちゃん?と雫も同じく足を止めて覗き込むと、真っ直ぐに見つめてくる力強い瞳と目が合った。
「なに、雫が慰めてくれんの」
伊澄はそう言い、雫のセーラー服のリボンに手をかけた。するりと抜かれ、奪われる。