それは麻薬のような愛だった
「そ、それは…」
どういう意味、と続く言葉は出なかった。伊澄は雫のリボンを手に持ったまま、再び歩き始める。
「いっちゃん、私のリボン…」
「このまま着いてくるなら返してやる」
この先の道には雫達の家のある住宅街しか無い。それが何を意味するのか、余程の馬鹿で無い限り察しがつく。
「……」
雫は酷く迷った。リボンのひとつくらい、失くしたとて予備が家にあるし問題は無い。伊澄もそれが分かっているから、こんな声のかけ方をしたのだろう。
拒否するべきだと頭では分かっている。このまま夏の思い出にしてしまった方がいいなんて事も。
けれど雫は抗えなかった。後悔すると分かっていながらも、手を伸ばしてしまった。
駆け寄って学ランの裾を掴む雫に、伊澄は何も言わなかった。ただ黙ってその手を掴み、数分ほど歩いた先にある自宅まで歩いて招き入れた。
言葉少なに会話を交わし、肌を重ねる。そんな関係は、2人が高校に入っても続くことになった。