それは麻薬のような愛だった
「バイバイ」
なんて事のない別れの挨拶に、初めて違和感を感じた。
この関係も潮時かと思い始めていた頃で、雫からの申し出は丁度良かったはずなのに、なぜか言い得ぬ不快感を感じた。
大学に進んでからも基本的に伊澄は変わらない。偏差値の高いとされる大学での授業も難なくこなせたし、言い寄る女もそれまでと大差は無かった。
けれど何処かいつも喉が渇いているような、背中に穴が空いたような、ぽっかりと抜け落ちた何かを常に感じていた。
原因は分からないし、日常生活にはなんら支障はない為、気の所為だと割り切り無視して過ごしていた。
しかし二十歳を迎えた年の冬に地元に帰った際、その原因を理解した。
同窓会など興味の欠片も無かったが、母親に偶には帰ってこいと半ば脅され帰省してみれば当人は嬉しそうに話しかけてきた。
「伊澄!昨日ね、久しぶりに雫ちゃんに会ったのよ」
母親が振ってきた話題は、久しぶりに聞く幼馴染の名前だった。
「同窓会で帰ってきたんですって。広報誌を持ってきてくれたついでに顔を見せてくれたの」
女の子が欲しかったのだと昔からしきりに言っていた母は、仲の良い同僚の娘の事を昔からいたく気に入っていた。
その時でさえ、伊澄の返事は素っ気ないもので「ふーん」とスマホの画面を見ながら適当に返したものだった。