それは麻薬のような愛だった
「その時にね、わざわざうちにお土産まで持ってきてくれたのよ。本当に可愛いらしい子!」
お土産どころか連絡ひとつ寄越さないあんたとは大違いね、と母親は鼻で笑った。
「うるせえわ。大学行ったらこんなもんだろうが」
「まあそうなんだけど。杜川さんも娘が全然帰ってこないって寂しがってたしね」
母親の言葉は意外だった。雫は母親と仲が良く、その母親がとても心配性なのも知っている為頻繁に顔を見せに帰っていると思っていた。
「せっかく帰ってきたんだし、伊澄も同窓会に参加してきたら?」
そう言う母親の手にはオーダーメイドのスーツが握れられており、拒否しようが無理矢理行かせるつもりだったんじゃねえかとちょっとした口喧嘩まで発展した。
結局なにかと口の立つ母親に口喧嘩で押し負け、挙句出席で返事を出したとまで言われ伊澄は渋々同窓会に参加した。
会場に着くや否や周りを要塞かと言わんばかりに囲まれ早速面倒くさくなって遠い目をした時、その場にいた雫と目が合った。
昔と何も変わらず、雫は伊澄と目が合うなり穏やかな笑顔で手を振ってきた。
「!」
その笑顔を見た瞬間だった。胸の辺りに生暖かいものを感じたのは。
これまで気にもしていなかった筈なのに、何故かその瞬間言いようのない心地よさに包まれた気がした。それと同時に、喉から手が出るような渇きに襲われた。
——触れたい。
誰かに対して明確にそう思ったのは、初めてだった。