それは麻薬のような愛だった
顔を雫の胸元に落とし、伊澄は縋るように頭を垂れた。
肩を掴む手は加減を忘れたのか強く握られ、少し痛いくらいだ。
雫はそれを黙って享受し、混乱する頭で言葉の意味を考える。伊澄の言葉を飲み込むのには、しばらくかかった。
「……」
無言の時間が永遠のように感じた後、グルグルと頭の中を渦巻いていたものが次第に凪のように落ち着きを取り戻していく。
肩に置かれた手をそっと離すと、伊澄の体がビクリと震えた。
「いっちゃん…何を、言ってるの?」
「雫…」
「そんな事言われても、困るよ。私、いっちゃんの事全然分かんない」
だって伊澄には、自分以外に女が居るじゃないか。そう思って見据えれば、伊澄の顔は絶望に染まっていた。
それを横目に雫は体を落とし、テーブルに置いてあったスマホを手に握らせた。
こんな生産性のない関係などもう辞めて、メッセージの女性ときちんと向き合うようにと、意味を込めて。
「いっちゃん。もう…私達、終わりにしよう」
「…っ」
泣きたいのはこちらの方なのにどうして君がそんな顔をするんだと、責めたくなった。
けれど悲しいかな、どれだけ辛い思いをさせられたとて、伊澄を嫌いになんてなれやしない。
「分かってるよ。私がいっちゃんの一番になれない事なんて…ずっと知ってる。…だけどね、もう駄目なんだ」
「……雫…?何、言って…」
「…いっちゃん、好きだよ」