それは麻薬のような愛だった
「お前が言ったんだろ。…俺以外とはセックス出来ねえって」
「……え、」
「…まあ、覚えてないってのは知ってたけどな」
覚えてない。伊澄にそんな事言った記憶は全くといっていいほどに無い。
記憶を辿ってもそんな大事な話をした事は無く、思い当たるのはそれを全て飛ばしたあの日のみ。よもや酔っ払った勢いで漏らしてしまったとでも言うのか、こんな大事な事を。
放心していると握られていた手に力が込められて、その強さに意識が返る。
「…あの時、お前をそこまで追い詰めてたんだって知って、自分が許せなかった。何を図々しく雫の心を求めてんだって…自分を殺したくなった」
「……」
「…けど不謹慎だけどよ…同時に嬉しくもあったんだ。体だけとはいえ、俺だけが許されてるって知って、雫が、俺だけの女でいてくれるんじゃないかって」
その強さのままに手を引かれ、寄せられる。伊澄の心音が大きく聞こえるほどに強く密着した。
「… 雫がどうしても欲しかった。私欲に負けて避妊しなかった。…本当に、ごめん」
どこまでもクソ野郎だよ、と伊澄は顔を歪めながら自嘲気味に言った。
「…こんな俺を許してくれるなら、子どもは二人で育てたい」
「いっちゃん…」
「それから…どれだけ時間がかかってもいいから…雫に、愛してるって言える資格が欲しい」