それは麻薬のような愛だった
告げた後、雫は強く目を瞑った。
どんな言葉がくるか怖かった。
漸く伊澄の心が近付いたのに、また離れるのか。
それかもっと酷い事になるかもしれない。
伊澄の言葉が返ってくるまでの時間が永遠かのように感じ、雫はひどく生きた心地がしなかった。
「…マジか」
「…っ」
ビクリと体が震える。
やっぱり信じてもらえないだろうかと喉元が焼けるように熱くなった。
「…分かった。ならすぐにでも結婚しよう」
しかし返ってきたのは、伊澄からのプロポーズだった。
「………は?」
「順番が違う事になったのは悪い。正式なプロポーズは改めてするから時間作ってくれるか」
「……」
「出来るだけ早く籍は入れたい。親への報告もしねえとだが…まあまず間違いなくぶん殴られるだろうな。雫、お前悪阻は大丈夫なのか。辛いなら俺1人で行くから無理はするな」
つらつらと放たれる伊澄の言葉に、雫はまるで知らない国の言葉でも聞いてるかのような感覚に陥った。
硬直したまま一切の返事をしない雫に気遣うような視線が向けられる。とにかく座れとベッドに腰を下ろされ、伊澄は床に片膝をつき雫の手を握った。
「どうした。不満があるなら言え。お前の希望は全部叶えるから」
「違、…えっと……どうして、疑わないの?」
「?何をだ」
「その…他の人の子どもじゃないか…とか」
「は?ねえだろ」
天地がひっくり返っても有り得ないみたいな顔をして言いのける伊澄に、呆気に取られつつも少しムッとした。
疑いなく信じてくれたのは有難いが、そこまで断言されると、それはそれで複雑だ。