それは麻薬のような愛だった
未熟でどうしようもない自分達でも、宿った命に罪はない。成長だって待ってはくれない。
気付くのが遅かったかもしれない。けれど例えそうだとしても、これから築いていくしかない。
これまでのような独りよがりではない、お互いを尊重できる愛を。
今の伊澄とならきっとそんな愛だって育んでいける。そんな自信と信頼を、確かに感じられた。
「これから大変だね。なんせ私達、夫婦どころか恋人すら経験してないんだもん」
本当に大変だ。不安だってゼロではない。
雫が出来るだけ明るく言えば、伊澄もまた同じなのかそうだなと言って似たような笑顔を返した。
けれどすぐにその顔は引き締まり、纏う雰囲気に緊張感を漂わせた。
「…なら、改めて言わせてくれ」
真剣味を帯びた台詞に、雫は黙って視線だけを返す。
「雫が好きだ。俺と付き合って欲しい。…それから」
伊澄は一度口を閉じ、そして静かに、けれどはっきりとその言葉を告げた。
「お前だけを愛してる。…だから雫、俺と…結婚してほしい」
答えなんて決まりきっている。
弾けんばかりの笑みを浮かべながら、雫は首を縦に振った。
「私も愛してる、いっちゃん」