それは麻薬のような愛だった
「けど意外だな、雫ってお酒弱いかと思ってた」
既に二十歳を迎えていた颯人はカクテル1杯で顔を赤くしている。赤くはなるが酔いはしないらしく、意識ははっきりしている。
「全然顔色変わらないね」
「そう?けど一応は初めてだしこれでやめておくよ」
対して雫は3杯ほどグラスを空けている。とはいえどれも甘く度数の低いカクテルなので、悪酔いしないどころかふわふわとした感覚もない。
けれどせっかくの彼氏と初めての誕生日、羽目を外して意識を飛ばすなんてことはしなくない。
雫の好きなトマトベースのパスタが届き、颯人が手を伸ばし取り分ける。
「そういえば、今年の年末年始はどうしようか。近場に小旅行でも行く?」
不意にかけられた言葉に少しだけ言い淀む。
「あ…ごめん。今回は帰省する予定なんだ」
「そうなの?休暇での帰省って初めてじゃない?」
「同窓会の案内が来たんだよ。しばらく実家に帰ってないし、両親にも顔見せてほしいって言われちゃったから帰ろうかなって」
「そうだね。それがいい」