それは麻薬のような愛だった
駐車場に着いて彼の車らしきものが見えると、伊澄は助手席のドアを開けて乗るように促した。
「…失礼します」
靴擦れのせいで思うように屈めないでいると、自然な仕草で手が添えられた。そのナチュラル過ぎるエスコートにさすがと感心したのは言うまでもない。
雫が座ると間も無くして伊澄も運転席に乗り込み、慣れた動作で車を発進させた。
「お前、殆ど家に帰ってないらしいな」
道路に出るや否や唐突に言われ、何で知ってるのと驚いて返した。
「母親が言ってたんだよ。お前が全然帰省しないっておばさんが愚痴ってたらしいぞ」
「あー…お母さん達、同じ職場だもんね」
今も変わらず同じ病院で看護師をしている2人はは何かと気が合うらしい。が、そんな事まで話しているのか思うと妙に気まずくなった。
「帰ってないのは単純に大学が楽しいからだよ。講義やバイトも忙しいしね」
「ふーん…」
「いっちゃんは大学どう?楽しい?」
「普通」
あまりに伊澄らしい返答にクスリと笑いが漏れた。
「でもいっちゃんならきっと変わらず人気者だよね。さっきも凄かったもん」
「……」
「ね、彼女はできた?…っていうか待って、もし居たら私ここに座ってるのマズくない?」
「今はいねえ」
一瞬慌てたものの、伊澄の返事にほっと安堵する。今は、と言う事はつい最近まで居たということか。
相変わらず取っ替え引っ替えしてるのだろうかとぼんやりと考えながら、窓の外に視線を移した。