それは麻薬のような愛だった
——うそだ、そんなまさか…!
どうしようもない感情に苛まれ、ガン!と拳を床を叩きつけた。
事を終えた後、シャワーを浴びたいとベッドを抜けて風呂場に飛び込んだ雫は途端に床に座り込んだ。
上から打ちつけてくるシャワーの水圧で髪の毛が垂れ下がり、視界は黒一色に染まる。
あれだけ嫌だったのに、辛かったのに。
自分でも知らぬうちにトラウマになってしまって、一生誰とも肌を重ねることなんて出来ないと思っていた。
だから、大事だった颯人も手放したのに。
「は…はは…あはは…っ」
顔を流れる水がシャワーの水なのか涙なのかわからない。
唯一わかるのは、伊澄に残っている未練だけ。
もう自分は完全に壊れてしまったんだと悟った。忘れたいのに、いっそ嫌ってしまいたいのに身体が、心がそれを許さない。
どこまでも奥深くに打ちつけられた伊澄への憧れと恋心は、もう理性でどうにかできるものではなくなってしまった。
頭と体、心。全部がちぐはぐでグチャグチャになりまともに立っていられず、自分ではもうどうしようも出来なかった。
——それなら、いっそ。
どこまでも堕ちてしまおうと思った。
こんな身体じゃ、伊澄を忘れたくても誰からも愛してもらえない。愛せない。
だったらもういっそ、どこまでも都合の良い女でいるしかないじゃないか。
今では伊澄の事が本当に好きなのかどうかも分からない。
純粋に恋をしていたあの頃にはもう、二度と戻れない。