それは麻薬のような愛だった



……が、何故か一向にそれがこない。



「!?…ちょ、まっ…——っ」


まさかの出来事に信じられず驚いて伊澄を押して離れるも、それを許さないとばかりに強く引き寄せられ、今度は更に深い口付けが降ってくる。


「んっ…んぁ…」


口内をぬるりと犯してくる舌を感じても、聞こえてくるのは自分の甘い声。

角度を変え、頭を押さえつけられ、弄られてもあの競り上がってくる吐き気は1ミリも来ない。

伊澄の手がシャツの下から侵入し、素肌をなぞりふくよかな双丘に触れても、込み上げてくるのは懐かしい快感だけだった。


——うそだ。そんなこと。

信じられなくて何度も抵抗しようとした。

けれど体はその意に反するように動こうとはせず、ただただ目の前の男から与えられる快感を享受しようとする。

次第に頭は痺れ、何も考えられなくなった。


「…っ、や…!」


雫の僅かな抵抗は聞こえていないのか、はたまた無視されているのか。

結局最後まで受け入れてしまい、思うままに欲を打ちつけられ果てた。


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