それは麻薬のような愛だった
「おい、できたぞ」
声の方を見れば雫がリクエストしたホットケーキがテーブルの上に並べられている。
バターの香りが香ばしく、ふわふわの生地は店のものと比べても遜色ない。
毎度どうやったらこんなに綺麗に作れるのと聞くが、「お前には一生無理」と至極辛辣な言葉だけが返ってくる。
「わ!美味しそう」
思ったままを声に出しながらカトラリーを並べて座れば、2人分のコーヒーを淹れていた伊澄も並べられた料理の前に腰を落とした。
いただきますと雫が言うや否や、伊澄は黙々と食べ進めてあっという間に平らげ、スマホを確認しながら帰り支度を始める。
「また連絡する」
伊澄は家に来た時と同じスーツを着用し、未だもさもさと口いっぱいにパンケーキを頬張る雫にそう声をかけた。
目は合わせるものの今は話せないので言葉はなく、口をもぐもぐとさせたまま雫は手をひらひらとさせた。
パタンと玄関のドアが閉まるまで背中を見送ると、点けたまま全く見ていなかったテレビに視線を向けた。
のんびり時間をかけて朝食を食べた後、2人分の皿をシンクまで持って行きさっと水にだけ浸けた。
その後玄関の施錠を行いリビングに戻るなりぐーっと大きく腕を上げ、体を伸ばした。
「やっぱり二度寝しよ」
これまで考えていた全ての予定を無に帰し、雫はベッドに向かってダイブした。
間も無くうとうとと睡魔がやってきて、雫はそれに抗う事なく眠りに落ちた。