それは麻薬のような愛だった
「正直、私にはメリット無いしなー…」
「この干物女!分かったよ!じゃあ一週間お昼奢るから、それでいい!?」
最後の手段だったのだろう。美波は酷く悔しそうに言い放つ。だがしかし、一週間もの間他人のお金でタダ飯が食せるというのは悪くない。
雫は途端に目を輝かせ、同期の手を取った。
「そこまで言うなら分かったよ。参加するよ」
「なんていい笑顔!くそぅ〜…」
これだけは使いたくなかった…と項垂れる美波を尻目に、先に戻るよと優しさの欠片も無い言葉を放って雫は自分のデスクへ戻った。
今は昼休みだが、定時後に食事へ行く事を考えたら少しでも今進めておいた方が良い。
そう思ってスリープモードに切り替えていたパソコンを立ち上げれば、キーボードの隣に放置していたスマホが通知を知らせてきた。
「…あー…」
送り主は大体想像がついていたが予想通りだった。
連絡してきたのは伊澄で、案の定今夜会えるかという連絡だった。
「……」
少し考えたが、雫はそのままを伝える事にした。
先日のように、これまでも友人との先約があったり事務所の飲み会やらで都合が悪く断った事は何度もある。
故に雫は今回もさして考える事なく、今までと同じように合コンに行くから無理だという理由を添えて会えない旨を返信した。
「よし、」
返信した事で満足し、必要のなくなったプライベート用のスマホは邪魔になるのでそのまま鞄の中へ仕舞い込む。
そのまま山の上のファイルを手に取り、机の上いっぱいに会計資料を広げた。