それは麻薬のような愛だった
『…お前、今まで飲んでたのか。今どこだ』
画面をきちんと見なかったが、電話をかけてきたのは伊澄だったらしい。なぜ怒っているんだろうとぼんやりと思いながら、雫は正直に答えた。
「んーと、帰りのタクシーの中〜」
『…間抜けな声しやがって、どんだけ飲んだんだ』
「いっぱい」
笑いながら答えると、チッ!と電話越しでも聞こえるほど大きな舌打ちを返された。
『今から家来い』
「え〜今から?今日は気分じゃな…」
『いいから来い』
返事も待たずに電話を切られ、霞む目でスマホを睨む。
なんだよもう。勝手すぎるよ。
そう文句を垂れながらも運転手に行き先変更を伝え、雫は仕方なく伊澄の家へと向かった。
どうやら電話がかかってきた場所からは雫の自宅より伊澄の家の方が近かったらしく、程なく見慣れたマンションの前に到着した。
お金を払ってタクシーを降り、ふらふらとエントランスへ向かって歩いているとオートロックのドアの前に人影が見えた。
「いっちゃん、きたよー」
手を振りながらその人物に歩み寄れば、不機嫌顔を更にしかめた伊澄が距離を詰めてくる。
そのまま何を言うでもなく腕を掴まれ、強く手を引かれながらエレベーターと廊下を抜けて伊澄の部屋に押し込まれた。