愛は花あられ
「ねぇ、妃都。」
玉ねぎを切るわたしをバッグハグしながら、師道社長が言う。
「何ですか?」
「何でそんなに、俺を避けるの?」
「わたしたち契約結婚ですよ?仲良くする必要ないじゃないですか。」
「確かに条件付きの結婚ではあるけど、契約結婚だと思ってるのは妃都だけ。俺は、妃都に惹かれて結婚した。」
また、そんなこと言って、、、
どうせ、他の女性にも「惹かれた」とか口説き文句を言ったりしてるんでしょ?
「何でわたしなんですか?師道社長なら、たくさん女性から声が掛かってくるでしょ?」
「え、まぁ、、、それは、そうだね。」
否定しないんかい。
「秘書の井神さんだって、師道社長に気があると思いますよ。すぐそばで支えてくれてる彼女の方が、師道社長の妻に適任だったんじゃないですか?」
「井神さんが俺に気があるのは分かってる。誘われたことがあるからね。」
「誘われた、とは?」
「愛人でもいいから、俺に抱かれたいって。」
「随分、素直に教えてくれるんですね。」
わたしはそう言いながら、玉ねぎを切り終え、次に人参に手を伸ばそうとすると、師道社長はわたしの顔を覗き込み、「嫉妬した?」と悪戯な表情で言った。
「してません。」
「なんだぁ。まぁ、、、井神さんは、そうゆう対象として見れないかな。"愛人でいい"なんて言う人を妻になんてしたくないよ。それから、俺が妃都に惹かれたのは、仕事をしてる時の妃都がかっこよかったから。仕事は早いし、部下へのフォローも出来て、指示は的確。誰にも媚びないで自分の芯があって、こんな素敵な女性がいるんだぁって、、、俺には、妃都が輝いて見えたんだ。」
そう言う師道社長の言葉は、素直に嬉しかった。
でも、ダメダメ。
もしかしたら、誰にでも言ってるかもしれないじゃない。
わたしは嬉しい気持ちを抑え「ありがとうございます。」と冷静に言った。