歪んだ月が愛しくて2



立夏Side





「っ、は…」



バッと、勢い良く顔を上げる。
最初に視界に入って来たのは、不安そうに顔を歪める未空と頼稀だった。



「な、に…」



2人の視線を浴びながら、俺は胸に手を当てて乱れた呼吸を落ち着かせる。



「何じゃないよ!リカこそ大丈夫なの!?凄い魘されてたよ!」

「え…」



魘されてた?



「……大丈夫か?」

「立夏くん、体調悪いの?」

「もう少し寝ててもいいぞ」

「具合悪いんだったら無理するなよ」

「だ、いじょうぶ…」



未空と頼稀だけじゃない。

希も葵もみっちゃんまで、どうして。



「詰め込み過ぎて疲れちゃったのかな」



……そうだ。

皆でテスト勉強してたんだ。

それなのに途中で眠くなって、それで…、



「怖い夢でも見たのか?」

「夢…」



嫌な夢を見た。

あれは俺の消し去りたい過去の一部。



今でも夢に出て来る理由は分かってる。

まだ何も終わってないからだ。



「立夏」



頼稀の声にハッと我に返る。



「お前…」



そんな顔されたら嫌でも分かってしまう。

心配性だな。



「大丈夫。ただ寝惚けてただけだから」



それにしてもリアルな夢だった。
鮮明に映像化された夢が、これから起こることを予期しているかのようで嫌な胸騒ぎがする。



「……何かあったら言えよ」



頼稀は俺の言葉に眉を顰めながらそう言った。



「過保護か?」

「茶化すな」

「はいはい。何かあったらすぐに言いますよ」

「………」



その顔は信じてないな。

まあ、別にいいけどさ。

俺だって頼稀を欺けるとは思ってないよ。



「皆もごめん、折角勉強見てくれてるのに寝ちゃって。いびき煩くなかった?」



でも、他の皆は騙されて欲しいな。



「煩いってもんじゃないよ。もう公害レベル」

「熟睡してたんだね。口の端から涎も垂らしてたよ」

「え、嘘!?」

「全く、だらしない」



それなのに、



「リカ…」



未空だけが険しい顔で俺を見つめていた。



「ん?」

「……ううん。何でもない」



……まだ、大丈夫。


ちゃんと笑えてる。


気付かれるはずないんだ。


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