歪んだ月が愛しくて2
「少し休憩するか?」
「そうだね。始めてから2時間くらい経つし一旦休憩しようか」
「なあ、何か喉乾かねぇ?」
「……それは俺に淹れて来いと?」
「頼ちゃん宜しくー!」
「チッ」
頼稀は希に促されて渋々重い腰を上げた。
「俺も手伝うよ」
「いい。お前は座ってろ」
「でも1人で全員分は…」
「いいの、いいの!ここは頼稀に任せようぜ!何たってここは頼稀の部屋なんだからさ〜」
「お前んちでもあるだろうが」
「のんちゃんもこう言ってんだから頼稀は1人で大丈夫だよ。リカは座ってて」
「キッチンに人が多いと邪魔になるだけだしね」
「そう言うことだ。で、何飲むんだよ?」
「オレンジジュース!」
「俺も!」
「僕もそれで」
「僕は温かいお茶で」
「立夏はコーヒーか?」
「あー……うん。お願いします」
「おう」
そう言って頼稀がキッチンに入って行く。
頼稀の姿が見えなくなると同時に他の皆が一気にダラけ始めた。
「ああ、やっと休憩だ〜」
「仙堂っ、ソファーの上で燥ぐな!埃が舞うだろうが!」
「えー、少しくらいいいじゃん。休憩なんだしさ」
「寛ぐなら自分の部屋に帰ってからにしろ!幅取って邪魔なんだよ!」
「それって俺とみっちゃんの部屋ならどんなに寛いでもいいってこと?」
「ちっ、がくないけど違う!紛らわしい言い方をするな!」
「紛らわしい言い方ってなぁに?普通にルームシェアって意味だったんだけど?」
「っ、貴様…」
「もうみっちゃんのムッツリ〜(笑)」
「仙堂のくせに…、調子に乗ってんじゃねぇえええ!!」
「えー、冗談なのにそんなに怒んなくても……、えっ、え、何それ?木彫りの熊?ちょっと待って、何でそんなの持ってるの?てかそれって普通に考えて頼稀達のだよね?流石に余所様のものを凶器に使うのはどうかと…」
「問答無用ぉおおおお!!」
「ギャー!みっちゃんがキレたー!」
頼稀のいないリビングは途端に騒がしくなる。
その発端はいつも通り未空から始まって、ストッパー役のみっちゃんを煽るだけ煽って怒らせて、そんな未空とみっちゃんを希が面白おかしく囃し立てる頃には既に収集が付かなくなっていた。正にカオス。葵に関しては二次被害に遭わないようにクッションで頭をガードしていたので論外だった。
すると最終的にみっちゃんの拳骨を食らって大人しくなった未空は「頼稀を手伝って来る〜」と言ってそそくさとキッチンに逃げ込んだ。
「チッ、逃げやがったな」
「あはははっ!未空が逃げたー!」
「いつも煩くしてごめんね」
「何で武藤が謝るわけ?煩いのはアイツだろう。ああ、煩いのがいなくなって清々した」
「……みっちゃん、キャラ変わってない?」
「は?どう言う意味?喧嘩売ってんの?」
「め、滅相もないですっ!」
「それにしても汐くん達はどうしたんだろう。明日からテストなのに大丈夫なのかな?」
「今日は最後の追い込みとか言ってたけど」
「追い込み?」
「徹夜で詰め込むつもりかよ。効率悪ぃな」
「それでもやらないよりはマシ。誰であろうとクラスの平均点を下げることは許さないから」
「ふふっ、邦光くんらしいね」
「それはそうと仙堂は大丈夫なの?今回こそ赤点は回避出来るんだろうね?」
「うーん、五分五ってとこかな。ヤマさえ外さなければそれなりに取れると思う」
「それならいいけど」
「今回は未空くんも頑張ってるみたい。きっと立夏くんがいるからだね」
「は?俺?」
いきなり話振られても困るんだが。
「うん。だって今まで以上に頑張ってるもん」
「だな」
「……ただ罰ゲームを受けたくないだけだと思うけど」
「ま、それもあるわな」
どっちだよ。