歪んだ月が愛しくて2
「落ち着いたか?」
やっぱりあやされてたのか。
恥ずかしい。
「……ごめん」
「それは何に対しての謝罪だ?」
「何って、面倒掛けたから…」
「それだけか?」
「………逃げてた、から」
会長の言う通りだった。
俺は会長に見られたあの日からずっと会長から逃げていた。
知られるのが怖くて、失いたくなくて、でも自分から手放すことも出来なくて。
「珍しく素直だな」
「……珍しくは余計だよ」
都合が良いな。
何も話さないくせに失いたくないなんて。
「何で俺から逃げてたんだ?」
「………」
「話せないのか?」
「……話したく、ない」
話せないんじゃない、話したくないんだ。
まだ、知られたくない。
それだけ言うと会長は「そうか」と言ってあっさりと引き下がった。
その返答が予想していたものと違い逆に俺から聞き返してしまった。
「……それだけ?」
「他に返す言葉があるか?」
聞いているのは俺の方なのに質問返しとかやめて欲しい。
返答に困る。
「話したくないならそれ以上は聞けねぇだろう」
「いい、の…?」
「何が?」
「いや、その、聞きたいこととか…」
「お前が言いたくねぇならこれ以上は聞かねぇよ。前にもそう言っただろうが」
覚えてる。
ちゃんと覚えてるよ。
でも…、
「いいの?」
会長はそれでいいの?
こんな俺が傍にいてもいいの?
皆にとっても、会長にとっても、決してプラスになる存在じゃないのに。
会長だって本当は分かっているはずだ。
俺を庇ったせいで金属バッドで殴られて、階段から落ちて。俺が傍にいたって良いことなんて何一つなかったじゃないか。
それなのに…、
「お前が俺から逃げなきゃそれでいい」
会長は全然懲りてなかった。