歪んだ月が愛しくて2



立夏Side





「ちょ、そ、そこまで怒ること!?走らせたのは悪かったって!ごめん!ごめんなさいっ!」

「そんなことはどうでもいい」

「は?どうでもいい?どうでも良くないからリンチしようとしてんだろう!」

「しねぇよ。そんなことしたら返り討ちに遭うのはこっちだからな」

「失礼な!人をゴリラみたいに言うな!」

「自覚ねぇのか?」

「ねぇよ!あるわけねぇだろうが!こちとら生まれて15年間人間として生きて来たんでね!」

「お前テンション高ぇな。遠足前にはしゃぎ過ぎて熱出すタイプだろう」

「ええ、お陰で生まれてこの方遠足なんてもんには行ったことねぇよ!文句あっかこの野郎ぉおおお!」

「ねぇからちょっと黙れ。話が進まねぇんだよ」

「話?だったら何でこんな人気のない、ところ、に…」

「人がいない方が話せることもあるだろう」

「………は、」



会長に手を引かれて連れて来られたのは人気のない裏庭だった。
会長はある程度進んだところで足を止めたが何故か手だけは離してくれなかった。
だから何となく分かった。
会長が俺をここに連れて来たわけも、俺の手を離してくれないわけも。



「お前と話がしたい」

「は、なし、なんて…」



ああ、とうとう来たか。

いつかはこんな日が来ると分かっていたはずなのに。



「……はな、して」



いつでも離れられるように準備していたはずなのに。



「離せよっ」



何が覚悟だ。

そんなもの全然ないじゃないか。

あんなに大見栄切って置きながら格好悪過ぎる。

だって離せ離せと言いながらこの手を離せないのは俺の方なんだから。



「はな…「立夏」



ビクッと、会長の声に思わず肩が跳ねる。



「逃げるな」

「、」



怒ってるわけでも、だからと言って嬉々とした声でもない。



「俺から、逃げるな…」

「………」



どちらかと言うと寂しそうな声。
らしくない声色に思わず視線を上げると案外近くに会長の顔があって驚いた。
会長は俺の手を掴んだまま反対の手で俺の頭を撫でた。
落ち着けと言われているようで次第に冷静さを取り戻すと同時に羞恥心が込み上げる。
会長の前で子供みたいに喚いてしまった数分前の自分が恨めしい。


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