歪んだ月が愛しくて2



「おーい、アオ生きてるかー?」

「葵ちゃんと目開けてろよ!怪我するからな!」

「そ、そんなこと、言われてもぉ〜」



案の定葵はパニック寸前だった。
今のところ汐のお陰で相手チームの攻撃は見切れている。
だから俺と未空さえ汐の指示通りに動ければ葵の鉢巻を死守することは出来るだろうが、逆に言えばいつまで経っても逃げてばかりで相手チームの鉢巻を取ることは出来ない。



どうすっかな。



「おぇ」



とうとう頭上から嗚咽が聞こえて来た。
これは本格的にヤバいぞ。
何がヤバいって葵のメンタルと体調がヤバい。



「ごめん、もう…」



グラッと、葵の身体が横に傾く。



「葵っ!?」



マジかよ!



葵の身体はゆっくりと俺の方に倒れて来た。
体重の軽い葵を片手で支えるのは簡単だ。普通なら。



でも運が悪いことに倒れて来たのは葵だけではなかった。



葵の身体が傾いた瞬間、咄嗟に足を止めた汐に相手チームの騎馬がぶつかったのだ。
その弾みでバランスを崩した相手チームの騎手がぐらりと大きく揺れて投げ出された。



見覚えのある横顔。



だから思わず―――















俺は手を伸ばしてしまった。


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