歪んだ月が愛しくて2
「リカ!」
「立夏くんっ!」
俺の身体が地面に落ちた直後、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
未空と汐が青い顔をして駆け寄って来るのを視界の端に入れながら未だ晴れることのない曇天の空を見上げた。
暫くすると俺の上で放心状態だった葵が真っ青な顔をして俺の上から退く。
そして左腕にいた彼もまた慌てた様子で俺の上から退いて少し距離を取ってグラウンドに座り込んだ。
「り、立夏くんっ、け、怪我…、怪我は!?」
「俺は大丈夫。葵は?」
「な、ない!ないよ!でも立夏くんが…っ」
「だから大丈夫だって。心配し過ぎだな」
「でもっ」
スッと、葵から視線を外して彼を見る。
「……白樺は?怪我してない?」
「、」
白樺は怒られた子供のように目を見開いていたかと思えば真っ青な顔で唇を震わせていた。
「大丈夫か?」
なるべく優しく努めて声を掛ければ白樺は小さな声で「…うん」と答えた。
でも白樺と目が合うことはなかった。寧ろ意図的に目を合わせないようにしてる気がした。
まあ、怪我はなさそうだからいいか。
「リカ、本当に大丈夫?一応病院に行った方が…」
「大袈裟だよ」
「で、でも、念のために保健室には行こうよ!俺立夏くんのことおんぶするからさ!」
「いや、だから歩けるって」
ゆっくりと上体を起こす。
するとバタバタと騒がしい足音が近付いて来た。
「大丈夫か!?」
「立夏怪我は!?」
「何いきなり倒れてるのさ!吃驚するだろう!」
「葵くんも怪我してない?」
駆け寄って来たのは頼稀、希、みっちゃん、遊馬の4人だった。
「僕は大丈夫、だけどっ」
「俺もへーきだよ」
葵の泣きそうな視線を感じる。
そのせいで頼稀から無言の圧力を掛けられて胃がキリキリと痛い。胃腸炎になったらどうしてくれるんだこの野郎。
「本当に大丈夫なのかい?」
至近距離から聞こえた聞き慣れたテノール。
その声に振り返るとそこには先程まで応援席にいたはずのアゲハが立っていた。
「救急車呼んだ方がいいんじゃないですか!?」
沖田先輩もかよ。
揃いも揃って騒々しいな。
「立夏くん!ほ、本当に大丈夫なんだよね!?」
「リカ嘘吐いてない?本当に怪我してない?」
「少しでも痛いところがあるなら我慢するなよ」
「立夏くんって隠してそうなんだよな…」
「確かに立夏くんは嘘を吐くのが上手いからね」
「……怪しい」
「藤岡!正直に言いな!」
「いやいや、さっきから正直に言ってるからね!本当に大丈夫だから!ちょっとは俺のこと信用してよ!」
そう言い張ってどうにか病院送りは免れた。
保健室送りも免れた、はずだったのに。
「ダメ」
ゆっくりと膝を付いて立ち上がろうとした時。
「保健室、行くよ」
スッと、タイミング良く差し出された手を思わず取ってしまった。