歪んだ月が愛しくて2
「白樺…」
やけにタイミング良いな。
……いや、この場合はタイミングが悪いのか。
「連れてってあげるから」
「え、いや」
そう言うつもりで手を出したわけじゃない。
それなのに変にタイミングが合ってしまい恰も「保健室行くから連れてって」みたいな図が出来上がってしまった。
「ほら、早く行くよ」
「いや、だから怪我してないから必要ないって」
「今は痛みがなくても後から来ることだってあるんだよ。保健室に行ってちゃんと診てもらった方がいい」
「だから大丈夫だって。本当俺のことは気にしないでいいから」
「無理」
「無理って…」
頑固だな。
白樺ってこんな奴だっけ?
……いや、初めて会った時から頑固だったかも。
人の話は聞かないし、変に真っ直ぐで一途だし。
まあ、保健室くらい行ってもいいか。それで白樺の気が済むなら。
それにここは俺が折れないといつまで経ってもこの不毛な会話が続きそうだし。
そう思って保健室に行くことを了承しようとした時。
「待て」
ガシッと、背後から肩を掴まれた。
「俺も行く」
案の定、そう言い出したのは頼稀だった。
この心配症のお母さんめ。
「リカが保健室に行くなら俺も行くよ!俺が連れて行く!」
「お、俺も!」
「僕も行くよ!僕のせいで立夏くんが怪我したんだから!」
「それを言ったら僕もそうだけど」
だから怪我してねぇって!しつこいな!
こうなることが目に見えてたから大事にしたくなかったんだ。
案の定頼稀を筆頭に過保護ズが騒ぎ出したじゃないか。
「じゃあ僕もお供しようかな」
お前は黙ってろ!
アゲハのせいで余計話がややこしくなったらどうしてくれるんだ。
責任取れねぇくせに話だけ大きくするなバカめ。
とりあえず一刻も早くグラウンドから退散しなければ。
こんな色んな意味で目立つ集団がグラウンドの中央でギャーギャー騒いでて目立ってないはずがない。これぞ悪目立ち。俺の一番嫌いな奴だ。
(ああ、もう早く帰りたい…)