ビター・ハニー・ビター




「は?専務、いま、なんて言いました?」


なんだか雲行きが怪しくなりつつある、最悪な出来事、その一は仕事中に起きた。


「偶に、事務仕事以外の時間外労働を雨宮に頼みたい」

ハイブランドのスーツで身を包み、頬杖をつくのはあたしを呼び付けた張本人。品の良い腕時計が計算されたようにちらりと見えて、今日も似合っててカッコイイぜ、畜生。と毎回見惚れる。

「いやいやいやいや時間外労働とか無理。大体このチームのいい所って、定時上がりですよね?ていうか、なんで急に?」

ただ、いつもであれば二秒で『はい♡かしこまりました♡』と、頷くところを今日のあたしは素直に頷けず、上司でもお構い無しに言葉を遮った。

「急にっつーか、前から頼もうとは思ってたんだよ、雨宮に」

「な、なんであたしですか?」

「適任がお前以外いないんだよ、頼む。な?」

申し訳なさそうに顔を歪める上司を前に、固まった身体は瞬きだけを繰り返す。

うそだ、寝耳に水だ。

専務秘書から、外れる!?


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