今夜0時、輝く桜の木の下で
花火が終わり、後片付けが始まった。

キラとシロー、佐藤は店の中で洗い物。
紺と咲夜は外に残り、テーブルや道具を片付けていた。

店内からは、キラのはしゃぐ声と、それに釣られて笑うシローの声、そして時折それをたしなめる佐藤の声が、かすかに聞こえてくる。

紺がテーブルを拭き終えた頃、花火の後始末をしていた咲夜が、空になったバケツを持って戻ってきた。

「花火、楽しかったね」

「そうっすね」

短く返しながらも、紺の声はどこか柔らかい。

「久しぶりだったな」

「そうなんすか?」

「大人になると、なかなか機会なくてさ」

咲夜は少し笑う。

「でも紺くんたちは、ずっとやってそうだよね。こういうの」

「さすがにそんなこと……」

言いかけて、少し考える。

「……あるかもっすね」

咲夜がくすっと笑った。

「うん、想像できる」

少しの沈黙。

紺は手を止めずに、ぽつりと言った。

「咲夜さんも、一緒にやりましょうよ」

咲夜が顔を上げる。

「来年も。それからも」

「私もいいの?」

「キラもシローも、そのつもりっすよ。たぶん」

咲夜は少しだけ目を細めた。

「……そっか」

小さく、嬉しそうに息を吐く。

「嬉しいな」

その表情は、ほんの少しだけ、崩れそうに見えた。

紺はそれに気づきながらも、あえて軽く言う。

「そんな喜ぶことでもなくないすか」

「紺くんにとっては、当たり前なんだね」

「?」

「誰かと一緒にいるのがさ」

少しだけ間を置いて、咲夜は続ける。

「私、仕方ないけど何するにもずっと一人だったから…」

さらっと言ったその言葉に、夜の空気がわずかに沈む。

「……桜見るのとかね」

紺は一瞬だけ手を止めた。

「俺も、一緒に見ていいっすか?」

「え?」

「来年、咲夜さんが桜見るとき、一緒にいていいっすか」

咲夜は言葉を失ったように、紺を見る。

「……真っ暗だよ?」

「知ってます」

「夜だし、危ないよ」

「それ、突っ込むとこっすか?」

「それに、未成年は——」

「俺、来年の四月で十八っす」

「……そっか」

また少し沈黙が落ちる。

「だから、いいっすか」

紺はそう言って、小指を差し出した。

少しだけ迷ったあと、咲夜はその指に自分の小指を重ねる。

「つまんなくても知らないよ」

「咲夜さんいて、つまんないはないっしょ」

軽く引っ張るようにして、指を絡める。

「ゆびきりとか、大人はしないっすか?」

「するよ」

咲夜は小さく笑った。

「大人も、ちゃんと約束するから」

咲夜の表情は、静かに満ちていた。
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