今夜0時、輝く桜の木の下で

大人

雨の日だった。

窓の向こうでは、細かな雨が静かに降り続いていた。

カフェには、キラの母親と佐藤、それからシフトに入っている咲夜の三人しかいなかった。

紺たちは試験前にも関わらずクラスメイトと遊びに出掛けているらしい。

「今日はもうお店閉めようかな。もうお客さんも来ないと思うし」

窓の外を眺めながら、キラの母親が言った。

「了解です」

「わかりました」

佐藤と咲夜も返事をして、閉店の準備を始めた。

テーブルを拭き、食器を片付ける。いつもより静かな店内で、咲夜はふと思い立ったように佐藤へ声をかけた。

「佐藤さんって、お酒は飲まないんですか?」

「え?」

突然の問いかけに、佐藤は手を止めた。

「全然、普通に飲みますけど……」

「よかったら、この後飲みに行きません?」

「え、二人で?」

「はい」

佐藤は思わず咲夜の顔を見た。

「……あいつらは?」

「未成年連れてっちゃダメでしょ」

佐藤さん面白いと笑う咲夜。

「え、本気で言って……」

「本気です。ずっと前から誘おうって思ってたんですよ」

咲夜は笑顔のまま答えた。

「……」

佐藤は少し考えるように黙り込んだ。

「私、いないんで。飲みに誘うような友達」

咲夜は手元の片付けを続けながら、何でもないことのように言った。

「……明日もあるし、早め解散なら」

「やった!」

咲夜の声が、静かな店内に弾んだ。

「速攻片付け終わらせます!」

嬉しそうに微笑みながら、咲夜は再び手を動かし始めた。
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