今夜0時、輝く桜の木の下で
ガラガラ、と引き戸を開けると、炭火の香ばしい匂いがふわりと漂ってきた。

店内はこぢんまりとしていて、席数も少ない。カウンターの向こうでは、店主が黙々と焼き鳥を焼いていた。

案内されたカウンター席に、咲夜と佐藤は並んで腰を下ろした。

咲夜はきょろきょろと店内を見回す。初めて訪れるお店だからか、どこか落ち着かない様子だった。

「なんていうか、こう、もっとオシャレなとこじゃなくてよかったの?」

隣から声をかけられ、咲夜は佐藤の方を向いた。

「佐藤さんオススメの美味しいお店が良かったんです」

「何飲みますか?」

「緑茶ハイで」

佐藤は店主に向き直ると、慣れた様子で注文を始めた。

「生と緑茶ハイと、串適当にお願いします」

それから、咲夜の方へ顔を戻す。

「なんか、食べたいのありますか?」

「一旦、大丈夫です」

「了解です」

注文を終え、二人はしばらく店内の様子を眺めていた。

やがて、それぞれの飲み物が運ばれてくる。

「じゃあ、乾杯」

「乾杯!」

グラスを軽く合わせ、咲夜はさっそく緑茶ハイに口をつけた。

「おいしー」

ほっとしたように頬を緩めてから、咲夜はふと思いついたように佐藤を見る。

「でも焼き鳥なら生のが合いますよね?」

「別にそんなことないと思いますけど」

「ビールの味苦手なんですよね……」

少し残念そうにグラスを見つめる咲夜に、佐藤は小さく首を傾げた。

「……年取ってくと平気になったりしますけどね」

「佐藤さん何歳から飲めました?」

「……じゅう……」

「 あ、わかりました大丈夫です」

佐藤が言い終わる前に、咲夜はさっと話を切り上げた。

その様子に、佐藤は何とも言えない顔で口をつぐむ。

ちょうどそのとき、店主おすすめの焼き鳥の盛り合わせが運ばれてきた。

香ばしい匂いに、咲夜の視線が串へと吸い寄せられる。

「いただきます」

一本手に取り、ひと口。

その瞬間、咲夜は目を見開いた。

「んー、美味しい! 佐藤さんこれ最高です」

「なら良かったっす」

嬉しそうに焼き鳥を頬張る咲夜を見て、佐藤も手元の串に手を伸ばした。

美味しい焼き鳥をつまみながら、二人のお酒も少しずつ進んでいった。
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