君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜
第二章 あれから5年が経ち

千紗は今…

(千紗side)

あれから5年が過ぎた。

涼さんと別れを告げた日…
それは私にとって始めて失恋した日でもあった。

正確に言えば、一方的な片思いにお別れをした日になる。 

彼に命を助けられてから3年間。
私の高校時代の全ては涼さん一色に染まっていた。後にも先にもあの人ほど心を奪われた人はいない。

今でも遠い記憶の片隅に、懐かしい思い出としてそっと眠っている。

私は今日も1人、白杖を片手に見えない世界で生きている。

潮風に吹かれながら海岸線の歩き慣れた道を歩く。ここは彼との思い出の場所。

5年前、涼さんと2人で通った地方の病院で、今はテレフォンオペレーターとして働いている。この街に就職を決め家族の元を離れて3年。今は毎日がそれなりに充実して、それなりに楽しく過ごしている。

高校を卒業後、盲者の職業訓練の専門学校で点字とパソコンを本格的に学び、今は点字の版訳の傍ら週3日で病院の仕事に就く。

私が1人でこうやって前向きに生きられているのは、涼さんのお陰だと今でも感謝している。

彼は渡米してからも変わらず、週一でメールを送って来てくれた。時間がある時は電話も惜しまずしてくれた。

きっと遠く離れた異国の地で、慣れない仕事と新しい環境の中、多忙な日々を過ごしていたに違いないのに…
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