君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜
これが麻里奈ちゃんが言っていた、イケメンで海外から来たモテモテの医師?なんだろうか…。

もっと突付き難くて気難しいイメージを勝手に抱いていたから、あまりにも爽やかで気さくな雰囲気に呆気に取られてしまった。

しばらく仕事の手を止めて、たわいもない話しを楽しむ。

如月先生はサーフィンの話を楽しそうにしてくれた。この場所はサーファーにとって隠れたメッカで、早朝の海はサーファーが結構来ているという事。

近くのパン屋が美味しくて、仕事前にサーフィンをしてから、そこで売ってる米粉パンを食べるのが日課だという。

「今度、是非食べてみて。そこの米粉パンとコーヒーが格別なんだ。」

「行ってみたいです。パン屋さんがあるなんて知らなかったので…
私、実はコーヒーが苦手で、体質なのか飲むと頭が痛くなってしまうんです。」
私もつい、如月先生に釣られて口が軽くなっていく。

「へえ。きっと肝臓が敏感なんだな。アルコールとか苦手じゃない?注射の時、アルコール消毒すると真っ赤になったりしないか?」

確かに…
お酒は一杯で眠くなってしまうし、アルコール消毒は痒くなってしまう時がある。

「さすがお医者様ですね。その通りです。大人になったらかっこよく『とりあえずビールで』って言える人になりたかったんですけど。」

確かにそんな憧れを持っていた頃もあったなと、昔を思い出してフフッと笑ってしまう。

「もしかして…こうやってよく見知らぬ人に話しかけられたりする?」
突然、なんの脈略も無い質問に、

「へっ⁈」
と、思わず変な声が出る。

「いや、唐突にごめん。その…綺麗だし、人当たりいいから少し心配になっただけです。」
しまったという様に、如月先生が苦笑いする。

「まさか…!例え声をかけらたとしても、私は視覚障害者ですし…向こうからスッと逃げて行きますよ。」
私はあえて重くならないように、ワザと軽くフフッと笑う。

「自覚が無いだけに…心配だな…。」
如月先生が独り言のようにそう呟いてため息を吐く。

私はなんと答えたら良いか言葉を失い戸惑ってしまう。

「ああ…すいません。俺が話しかけたら仕事が進まないですよね。気にせず仕事を続けて下さい。僕はコーヒーを飲み終わったら勝手に行くので。」
今度はそう言って突然話を切り上げてしまった。

楽しいひと時のお喋りから、急に引き離されて戸惑いながらも軽く会釈をして、パソコンにと顔を戻す。

もっと話していたかったなと思う思考を無理矢理仕事に戻し、イヤフォンで言葉を拾いながら、点字をタイピングし始める。

しばらくは如月先生の気配を感じ集中できずにいたけれど、いつの間にか無心でタイピングに没頭していた。
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