君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜
やっと一息付いたのはお昼を1時間も超えた頃。気付けばさすがに如月先生は居なくなった。

フーッと一息付きながら、手探りでもうすでに氷が溶けて汗をかいたグラスに手を伸ばす。

だけど…
やっぱり、如月先生の声…何となくあの人と似ていた様な…?
いやいや、まさか他人の空似だ。

彼はどちらかというともっと早口で、理路整然とした喋り方だった。あんなに丁寧でゆったりした話し方はしなかった。

まだ未練がましく彼を忘れられない自分に苛立ちさえ覚える。

しっかりしなくちゃ。
誰かに頼らず生きるって決めたんだから。
自分自身にカツを入れる。

遅い昼ご飯を1人で食べて、気分転換にと日傘をさして浜辺を歩く。
8月に入れば夏本場という感じで、眩しい程の太陽に砂浜が焼かれて、靴底からも熱が伝わるくらいだった。裸足で歩いたらきっと火傷してしまうだろう。

ほんの数分砂浜を歩いただけで汗が吹き出し疲れを覚える。

堤防の木陰で足を止めて防波堤に腰を下ろすと、微かに聞こえる人々の声…

こんな真夏の太陽の下、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。サーファーか釣り人がいるのかな?
明るさに人の影しか認識出来ない私は、特に気にも留めず、通り過ぎるのをただ静かに静観しようと視線を海に流す。

「ねぇ、彼女。1人?
暇なら僕らとお茶しない?」
突然、軽く声を掛けられて、私が座る防波堤の横に囲む様に数人が座ってくる。

えっ…!?
と、固まり警戒感を出しつつ、それでも表面上はそれを見せずに今の状況を慎重に把握する。

「あの、すいません。私、目があまり見えなくて…健常者では無いので、構わないでください。」

自分からそう伝えて、向こうから立ち去ってもらえる事を心で祈る。

「俺らの事見えてないの⁉︎
マジで!?君可愛いのに残念ー。」
そう言いつつ、2人コソコソと耳打ちしている声がする。

「まぁ別にいいから、一緒に行こうよ。」
半ば強引に腕を引っ張られて、さすがにヤバい…と心臓がドクンと嫌な音を立て始めた。

「あの、離してください。」
どうしよう…どうすればいいの…誰か…助けを…
掴まれた手の力の強さにたじろぎ、頭はパニック寸前だ。引っ張られる腕をなんとか離してもらおうと必死で振る。

「おい!何してるんだ?」
急に黒い影が差したかと思うと、サッと握られた腕が軽くなる。

「イッ!?イテテテ…!!」
腕を掴んでいた男が退く。
見えない目では状況が良く分からないけれど、黒い大きな影に守られて少し安堵する。

「お前ら寄ってたかって何してるんだ。彼女嫌がってるじゃないか!」
影の主は凄む様にそう言って、男達を追い払ってくれた。

「わっ、ヤベ。すいません!オレらただの出来心で…失礼します!!」
男達は慌てた様でバタバタと逃げていった。
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