ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 そこにフルネームで挨拶までしてくるから吹き出してしまう。そんな俺にムッとした表情で見あげてきた四宮を見て初めてそこでハッとした。

 俺の服をゆるっと着ている四宮。当たり前だが普段見ることなど出来ない姿だ。

 自分で服を渡しておいて今さらだろうと脳内で突っ込むものの、俺の服を着ている無防備な四宮を見て初めて――女を意識してしまってマズイ、そう思った。

 その思考を何とか切り替えたくて強引にモモを四宮に押し付けてトイレに逃げた。気持ちをなんとか落ち着けて戻ったのにまた四宮は無防備にやらかしてくれる。

「え、ぅんっ」

 モモの舌が四宮の顎下や頬を舐めるたび、甘い声を無意識にこぼす。

「んっ、まっ……ぁ、ちょっ」

(待て待て待て。無自覚にそんな声を出すな、ばかたれ)

 思わずモモを抱きあげたら四宮は少し不満そうにしたもののすぐに含み笑いで挑発的で間の抜けた言葉を投げてきた。

(無自覚ってタチが悪いな……)

 始まる期間限定の恋人……これは一体どこまで進むものなのだろう。

 たった三カ月だ、そう思ったから受け入れてしまった。
 
 けれど浅はかだったかもしれないと今さら思って若干の後悔はある。

 四宮はこれから俺に何を求めてくるのだろうか。

 そして俺はそれを本当に受け止めてどこまで応えきってやれるのだろうか? 今はまだ想像も出来なかった。
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