ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 思い切って告白して、あっさり振られて。それでも諦められなくて振られた理由をチャンスに変えた。

 常識なんかしらない、謙虚さなんかどこかへ捨ててきた。でもそれを後悔なんかしない。

 目の前に広がった世界を私はどうしたって手放したくはないんだ。


 晴れた休日の昼前、水族館前は行き交う人が多い。カップルや家族、友達同士……いろんな人が水族館内へ流れていく。その中で目に留まった――愛しい人が。その立ち姿に遠目で見惚れて胸がドキドキし始める。

(私服の安積さん……なんかいつもと全然違う)

 首元がヘンリーネックになっているデザインの白いカットソーをゆるっと着こなしている。黒のパンツでシンプルな服装、でも十分目を引いた。背が高いからスタイルもいい、黒髪の前髪を軽くかきあげていつもしている眼鏡をしていないのはどうして?

(眼鏡は?! 朝は眼鏡していたのに!)

 遠くの柱から盗み見して変質者だ、私は。それでもちょっと心構えしないと出ていけなくて。最後に手鏡を出して顔におかしなところがないか最終確認をしていたら――ハッとした。

 安積さんに近づくなんだかやたら可愛い女の人。

 その人が近寄ってなにか声を掛けている。細身の体、でもその体の線がしっかり見えるようなタイトワンピースを着てモテる女感全開。あれは、なに?

(え、だれ? なになに?)

 私はここで隠れて様子を見ているだけなのか?! 悶々しても出て行けないチキンな私! 足が地に根付いたように固まって動けずにいる。

 それなのにその女の人はお構いなしに安積さんに近寄って、安積さんが携帯を取り出した!

(!)
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