ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 しかも安積さんからこれですごく気を遣っての行動なのだと聞かされていると余計だ。気遣いし過ぎて気疲れしてそう、なんて少し可哀想になる。

「お口に会えばいいですけど」

 オールラウンダーでプロ級の料理の腕前を持つ方で、ましてやその方が考案したレシピを食してもらうなどチャレンジャーではないか、私。とは思うのだが、数回作って私なりにうまく作れるようになったのだ。

 柳瀬部長からうまいの言葉を得られたら安積さんに自信をもって作って食べてもらえるかもしれない、なんてまた邪な気持ちを抱いて差しだしている。

「じゃあ遠慮なく。いただきまーす」

 軽くひとくち齧ったら目が見開かれて。

「あ、お口に合わなかったですか?」

「……いや」

 そう言いながらもう一口。今度は口の中の味を探る様に噛みしめて食べている。このサンドイッチのレシピに気付いたのだろうか、そんな思いがフトよぎるのだがわざわざ自分から公言する必要もない。

「どうですか?」

「美味しい。表面が焼けてるのがまたすごくいいね」

「ですよねぇ。私も教えてもらってからお気に入りです」

「へぇ」

 パクパクと数口で平らげた柳瀬部長はにこりと微笑みコーヒーを手に取ると席を立った。コーヒーを飲むその立ち姿だけでも絵になる様な人だ。柳瀬部長がモテるのは単純にビジュアルも良いから。そこにこの口調、雰囲気、肩書まで付いてきては無双ではないか?

「ごちそうさま。生き返った」

「大げさです。一切れなのに」

「いやいや。四宮さんの優しさに」

 そしてこんなリップサービス、頭が下がる。
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