ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
「お口に合って何よりです。料理上手な柳瀬部長にお墨付きをもらえたようで自信になりました」

「それこそ大げさだね? 本当に美味しかったよ。ありがとう」

 腕時計を確認して最後のコーヒーを流し込んだらポケットからひとつ可愛いイチゴ柄の飴をくれた。

「え?」

「ごちそうさま。口直しにどうぞ?」

 そう言って軽く手を振ってカフェブースから去っていく。去り際までスマートだ。バツイチでもモテるに決まっている。なんなら一度失敗しているからこそよりモテそうなのだ。

(恐ろしや、柳瀬部長)

 オフィス内では柳瀬派閥があるほど色んな方面で注目されている人なのだ。女性社員からも特別な視線で見つめられている。周りの同期に柳瀬部長の下で働けるの羨ましい! なんて言われたけれど、私はやっぱりどうしたって安積さんが好きなのだ。羨ましがられたところでなにとない。

 安積さんと柳瀬部長は同期、ふたりは仲も良さそうで信頼感を感じる。柳瀬部長は当然安積さんが転属することを理解して了承しているのだろう。それをなんとか覆してはくれないものだろうか。この部署に必要だと、引き留めてはくれないものか。

(行ってほしくない……たとえそれは安積さんが希望して望んだことだとしても)
 
 食べきったランチボックスを片付けながら柳瀬部長からもらった飴玉を口の中に放り込む。甘いイチゴミルクが切なくなる胸に染みていった。
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