ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 ドキドキして胸が高鳴って。今この室内でふたりきりだ。

 この時間だけは、安積さんと二人だけの世界にいれる。それを感じるほどにドキドキ心が逸り出してしまうんだ。


「四宮の今後の目標とか……それこそ新しいチャレンジでも。叶えたい夢……は、なんか大層だよな。うーん、やりたいこととか、頑張ってみたいこと。ある?」

「……」

「今の部署で出来ることもそうだけど、異動希望とか」

「異動、ですか?」

「うん。品質管理でいろいろ学んでここでさらに上を目指すももちろんいいけど。四宮ってもともとマーケティングを専攻してきたんじゃなかったっけ。例えば販売部に行ってみるとか」

「販売部……」

 ぽつりこぼした言葉に安積さんが少し困り顔で微笑む。

「例えばだぞ? キャリアアップはさ、専門知識やスキルを向上させるためのものだし、四宮の経歴を高めるチャンスだろ? 四宮が勉強してきたことがさらに職能を磨けるキッカケになるならいいんじゃないかなって」

「……」

「やってみたいことが今すぐに見つけられないならそれを探す機会にもなるしな」

「……」

 将来の展望を聞かれることは予測していたが、まさか異動希望がないかなどと問われるとは思わずわかりやすく言葉に詰まってしまった。販売部に興味がないわけじゃない。安積さんが私の専攻を覚えていてくれてそれを活かそうとしてくれていることにまた胸は震えた。気持ちや期待に応えたくなるのも本音だ。

 でもそれ以上に――。

 (このまま安積さんの下で働き続けたい……)
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