ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
「四宮」

 腕が伸びたのは無意識だった。少し離れた位置にいる、そう思っていたけれど腕を伸ばしたら大した距離ではなかった。その手を掴んだら思った。

 俺が――遠いと思っていただけだった。

 細い手首を掴んでそのまま掌を包み込む。小さな手だな、握りしめて包み込める。それを思ったら自然と包む手に力が入った。

「どうして言わないの」

 なぜ、言ってくれない。

「誕生日なんだろ? 明日」

 なぜ、俺に言わない。

「なぜ黙ってる」

「だって……」

「恋人だろ? 祝うの当然」

「……」

「祝わせて」


 わかっている。これが優しさなんかじゃないことは。

 でもどうしたらいいんだ。

 何かしてやりたいんだ……四宮に。
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