ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 大人は大人だ。私よりもずっと落ち着いた大人の男の人だった。

 同世代とは違う、でも父親みたいに歳の離れた感じもしない。年齢という表示はあるけれど、ただ普通に落ち着いた男の人、それだけだった。

 年齢差を理由にされたからこそ、その年齢差を逆手にとった。付き合ってみたらこそわかるかもしれないジェネレーションギャップ……でもそんなものひとつもなかった。私から年齢差を感じて寂しく思うことも違和感もなにもなかったのだ。

 でも安積さんには?

 安積さんにとって私は、幼い歳の離れた女の子……そんな感じだったのかな。

 手も出さない、そう言われたのは私に性的魅力なんかなかったからだろう。なんなら猫レベルだったではないか。

 (なんか……思い出して虚しくなるな……)
 
 先日抱きしめてくれたのだって小さい子を宥めるのと同じような感覚だったのだろう。

 見た目や意識で取り繕っても誤魔化せない、期待させられない。安積さんが惹かれるような魅力的な女性にはなれなかった。


 ――もう終わりにしよう。


 告げられた言葉に私は嫌だと否定だけしてちゃんと気持ちに応えていないことを思い出す。

 わかりましたと、素直に受け止められなくて、嫌だと泣いて訴えた。それこそ、幼い子のように。

 あの答えを最後にするの? あの日の私が安積さんにとって最後の記憶になるの? 自分に問いかけて首を左右に振る。
 

 あれが最後でいいわけがない。あれを最後にしたら……。
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