ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 ――ガチャン、と鍵が開いた音に思考が目の前に戻された。

「四宮?」

「あああ、あのぉ!」

 このお部屋に足を踏み入れる前に確認しないといけないことが私にはある。心構えなどまだなかったのに、そんな急に覚悟を決める時が来ようとは。

(覚悟を決めろ! 私!)

「おお、お部屋にお邪魔する前にか、か、か確認したい事がっ!」

「……確認?」

「そそ、その……」

 どもる私をジッと見つめていた安積さんだが、堪えきれなくなったのかプッと吹き出した。

「心配しなくても手を出したりしないよ?」

「ええ?! だ、出さないんですか?!」

「ええ? 出してほしいの?!」

「当たり前です!」

「……」

「……」

 玄関前、しかもまだここは外だ。とんだ痴女発言、雨が強く降っていて良かったと心から思う。

「すみません……違うんです、そうじゃなくてその……すみません」

 言うほどに墓穴を掘りそうで、穴があったら入りたいはまさにこのことだ。
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