ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 頭からかぶったタオル。それを今度は安積さんが両手でわしゃわしゃと軽く拭いてくれる。

 冷たい、そう言っていた指先が温かく感じるのは気のせい? 見つめ合うとより熱を感じるのは私が?

「風邪、ひくなよ?」

 恋人になりたい、そう思っていた。
 
 大人の恋ってどうするのかなって……でも安積さんが言ってくれた。

 私のしたい恋をしたらいいって。

 私はずっと好きな人に大事にされることを夢見て憧れていた。

 そんなこと当たり前じゃないかと、思われることだとしてもその当たり前がなかったから。思いを否定されて、相手にばかり尽くす関係で大事にされている気がしなかった。でもそういうものなのかと諦めて納得させてきた。


 でも違った。

 恋愛は思いあってこそ、相手だけじゃない、自分だって愛されてこそだって。

 愛されたらきっと、もっと相手を大事に出来るはずだってそう思った。

 こんな風に、好きな人の部屋で優しい声をかけてもらって見つめ合える。こんな時間がどうしようもなく愛しい。

 お互いを大事に思いあえる……私がしたい恋は、そんな恋だ。
 

 そんな恋を、私は安積さんとしたい。
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