ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 それでも大学を出たばかりの様な小娘が相手にしてもらえるなど思わなかったし、女として見つめてもらう前にまずは仕事で独り立ちできるようにと努力を重ねた。

 自分で出来る範囲をしっかりこなせるように、任せてもらえるように、信頼してもらえるように……そんな思いで勤める毎日。

 仕事は好きだ、アパレルに触れて知らなかった世界はまだまだ多い。その中で勉強しながら世界を知れる幸せがある。この仕事を好きだと、そう思えるのが嬉しかった。でもそれもきっと安積さんのおかげなのだ。それだけ仕事に打ち込めたから好きにたどり着けたのだと。

「四宮の仕事は丁寧だな」
 
 二年目の時にフトそんな言葉をもらえて嬉しかった。

「同じことを繰り返すってつまらないし飽きるのに……いつだって丁寧にできるの偉いと思うよ」
 
 フッと優しく微笑んでそう言ってもらえて胸がキュッと締め付けられる。それでもそんな仕事の見本は安積さんだ。

 そう返せたら良かったのに見つめられて微笑まれたら赤くなった頬を隠すのに必死で顔をあげられなかった。

「期待してる。頑張れよ」

 その声が優しかった。
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