昨日までの世界。

第2話 始まり


入学式の間も、不思議と蒼也先輩のことが頭から離れなかった。

何故だろう。

でも、
私はまだ蒼也先輩のこと何も知らなくて、

”時間をかけて相手を知り、恋をする”
”一目惚れはしない”

そんな自分に対する固定概念が、この気持ちの答えを探すのを邪魔しているようにも思えた。

【はい、ではー1年A組退場して下さい。在校生は拍手を。】

式が終わって、拍手を受けながら教室に戻る

名簿順で決められた席

大体窓側だった


「あのさー。私、菜乃の考えてること分かるよ。当てようか?」

前の席に座っている朝美ちゃんがクルッと後ろを向き、ニヤついている。

朝美ちゃんと私は中学の時も前後の席で、友達になったのもそれがきっかけだった。

「えっ私の考えてること?」

「そう、式の間も上の空でさ~
あれでしょ?さっきの蒼也先輩がタイプなんでしょ?」

「え!!いや、そういう事を考えてた訳じゃないよ!」

「ふーーん?で、すごい勧誘されてたけど、バスケ部のマネージャーどうするの?」

「それは、、、うーん、、、。バスケの事も分からないし、辞めておこうかなと思ってるよ。」

「そうなんだ、てっきり蒼也先輩目的で入部するのかと思ったのに~」

「ちっ、ちがうもん!そういうのじゃないからね
と、トイレ行ってくる!!」

「ふふ、行ってらっしゃーい」

鋭い朝美ちゃんに、私の思考を見透かされてるようで、必死に否定する事が、逆に何かを肯定しているようで恥ずかしかった。

トイレを出て、早歩きで廊下を曲がった時、
急に大きな影にぶつかった。

「わ!!!すみません!!」

『、、、。ごめん、こっちこそ。』

そう言って身長の高い男の子が、隣のクラスの教室へ入っていった。どうやら同学年の人みたいだ。

どこかで見かけたことがあるような、、、

そんな気がして考えたけど、結局思い出せず。

時計をふと見て、迫るチャイムの時間に焦りながら教室に戻った。
< 4 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop