昨日までの世界。
第2話 始まり
入学式の間も、不思議と蒼也先輩のことが頭から離れなかった。
何故だろう。
でも、
私はまだ蒼也先輩のこと何も知らなくて、
”時間をかけて相手を知り、恋をする”
”一目惚れはしない”
そんな自分に対する固定概念が、この気持ちの答えを探すのを邪魔しているようにも思えた。
【はい、ではー1年A組退場して下さい。在校生は拍手を。】
式が終わって、拍手を受けながら教室に戻る
名簿順で決められた席
大体窓側だった
「あのさー。私、菜乃の考えてること分かるよ。当てようか?」
前の席に座っている朝美ちゃんがクルッと後ろを向き、ニヤついている。
朝美ちゃんと私は中学の時も前後の席で、友達になったのもそれがきっかけだった。
「えっ私の考えてること?」
「そう、式の間も上の空でさ~
あれでしょ?さっきの蒼也先輩がタイプなんでしょ?」
「え!!いや、そういう事を考えてた訳じゃないよ!」
「ふーーん?で、すごい勧誘されてたけど、バスケ部のマネージャーどうするの?」
「それは、、、うーん、、、。バスケの事も分からないし、辞めておこうかなと思ってるよ。」
「そうなんだ、てっきり蒼也先輩目的で入部するのかと思ったのに~」
「ちっ、ちがうもん!そういうのじゃないからね
と、トイレ行ってくる!!」
「ふふ、行ってらっしゃーい」
鋭い朝美ちゃんに、私の思考を見透かされてるようで、必死に否定する事が、逆に何かを肯定しているようで恥ずかしかった。
トイレを出て、早歩きで廊下を曲がった時、
急に大きな影にぶつかった。
「わ!!!すみません!!」
『、、、。ごめん、こっちこそ。』
そう言って身長の高い男の子が、隣のクラスの教室へ入っていった。どうやら同学年の人みたいだ。
どこかで見かけたことがあるような、、、
そんな気がして考えたけど、結局思い出せず。
時計をふと見て、迫るチャイムの時間に焦りながら教室に戻った。