あの日の第二ボタン

エピローグ

あの夜から、全てが少しずつ変わり始めた。
だけど、急に世界が華やかになるわけでも、毎日が夢のようになるわけでもなかった。


優人は変わらず、講義に出て、カフェでバイトをして、たまに愚痴を溢す大学生活を送っていた。
悠依もまた、フルートと勉強に追われながら、新しい友達と少しずつ大学に滲んでいた。


だけど、教室の片隅に「ゆいちゃん」の姿があること。
講義帰りに寄ったカフェのカップに「ひろと先輩」がメッセージを書いて手渡してくれること。
それが何よりも嬉しかった。


「やっと、ちゃんと隣にいられるんだね。」


春に陽射しがカーテンを揺らし、教室の窓から差し込む。
二人の机の上には、一冊のノートと、あの日渡された第二ボタンが置かれていた。


オレンジ色の月は、もう見えない。

けれど、あの日と同じ風が、今日も変わらず静かに吹いていた。
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