【完結】悲劇の継母が幸せになるまで
『何の役に立たなかったが、今回ばかりはお前を褒めてやる!』

『…………え?』

『シュリーズ公爵も役に立たない令嬢ばかり嫁にとっているという変わり者だ。こちらも厄介払いもできて金も手に入った。これ以上、嬉しいことはない……!』


父は興奮しているようだった。
金が手に入るのが嬉しいようだが、父が金に困窮していることすらヴァネッサは知らなかった。
幼い頃から虐げられていたヴァネッサには何もわからない。


『シュリーズ公爵家では何も言わずにいるだけでいい。ここであったことは絶対に話すんじゃない……! わかったなっ!?』

『……は、はい』

『シュリーズ公爵の言うことに逆らうなよ! 戻ってきても居場所はない。いいな……?』


ヴァネッサは唾を吐きかけながら父にそう言われて頷いた。
何の説明も受けないまま馬車に押し込まれてしまう。
突然、何も知らない暗闇に放り投げられてしまったようだ。
悲しいのに涙すら出てこない。
咳き込みながら壁にもたれるようにしてヴァネッサは馬車で揺られていた。

(……誰もわたしを必要としない。わたしはいらない存在なんだわ)

どのくらいそうしていただろうか。
窓の外を見る余裕なんかなかった。体の震えを押さえながら、痒みが増した真っ赤な肌を掻きむしる。

(醜い……だから愛されない。このままわたしはどうなってしまうの?)
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