【完結】悲劇の継母が幸せになるまで
* * *


「────ッ!?」


首が痛くて押さえると包帯が巻いてあった。


「え……?」


掠れた弱々しい声が耳に届くが、それは自分の声だとわかる。
腕を下ろすと手首がありえないほどに細い。
今にも折れてしまいそうだ。

(どういう、こと……? それにさっきのは小説で読んだ〝悲劇の継母〟ヴァネッサの話よね?)

悪役令嬢アンリエッタの過去が明かされた番外編。
悲劇の継母ヴァネッサは継子のアンリエッタの前で命を落としてトラウマを植え付ける役回りだ。
その後、あまりの悲惨な過去から『悲劇の継母』という名前がついたほど。

三人目の妻、ヴァネッサがすぐに死んだことでアンリエッタの父親であるシュリーズ公爵の評判は地に落ちてしまう。
そして一人目の妻が残したアンリエッタも心ない噂からひどい目に遭い、父親であるシュリーズ公爵を恨みながら育つ。
彼女が悪役として立ち回る小説の本編が始まるというわけだ。
窓に映る自身の姿は明らかにヴァネッサの特徴と見た目に一致する。
それに先ほど夢のように駆け巡ったのがヴァネッサの記憶だとしたら……。

(その前にわたしは、ヴァネッサになったということ? いいえ、前世の記憶を取り戻したというべきなのかしら)
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