【完結】悲劇の継母が幸せになるまで
「……信じられない」


そんなことも知らずにのこのこと買い物にやってきて店から拒絶されているのを笑われていたのだ。
そのことに気づいた瞬間、全身から血の気が引いていく。
周囲にいる人々から馬鹿にされて笑われていることにやっと気がついたのだ。

「どうしてこんなことをしちまったんだろうねぇ」
「お貴族様の考えることはわかんないがやりすぎだよな!」
「ティンナール伯爵家も落ちたもんだね」

クスクスと笑い声がここまで聞こえる。
ここが現実だとは思えなかった。

(なに……何が起こっているの? わたくしがこんなことを言われるなんて信じられない)

それは両親も同じ気持ちらしい。
父の顔が真っ青になっていて、母は怒りで震えている。
母が持っていた扇子がバキリと折れてしまったが、それもティンナール伯爵家を嘲笑う声でかき消されてしまった。

(どうなっているのよ! いつものようにヴァネッサに接しただけなのにっ)

エディットは逃げ帰るようにして王都を後にした。
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