【完結】悲劇の継母が幸せになるまで
「ギルベルト様?」
「ゆっくりでいい。君にはまだまだ時間はたくさん必要だ」
「…………え?」
今までにない優しくて少し悲しい表情でこちらをみるギルベルトを見つめていた。
「君の新しい居場所はここだ。ヴァネッサ」
「…………!」
ヴァネッサの心臓が忙しなく脈を打つ。
シルバーグレーの髪がサラリと揺れた。
長い前髪の隙間から見える赤い瞳が呆然とするヴァネッサを映し出している。
「ギルベルト様……?」
「今は何も考えなくていい。たくさん食べてゆっくり休んでくれ」
ヴァネッサは小さく頷いた。
なんだか彼にうまく丸め込まれたような気がしていた。
これも大人の余裕だろうか。
(確かギルベルト様は二十九歳になるんだったかしら。大人の余裕を感じるわ)
だが、これでは今まで通りベッドで寝たままになってしまう。
せめて散歩だけでも許可をもらおうと、ヴァネッサは部屋を出ようとするギルベルトを引き留めるように声を上げる。
「あの、ギルベルト様……!」
「どうした?」
「そろそろ外で散歩をしてみてもいいでしょうか」
「……。ああ、セリーナかレイを一緒に連れていけ」
「わかりました」
ヴァネッサはパッと瞳を輝かせた。
散歩の許可が出たということは、部屋の中ではなく外に行けるということだ。
手を合わせてヴァネッサは喜んでいると、隣にいたセリーナが「よかったですね」と微笑んだ。
「ありがとうございます。ギルベルト様」
「…………!」
ヴァネッサは満面の笑みを浮かべてギルベルトにお礼を言う。
彼は頷いてから部屋を出て行った。