【完結】悲劇の継母が幸せになるまで
それと同時に聞いたのはティンナール伯爵への不満だ。
『税が上がり続けている』『彼は娼館に頻繁に出入りしていて大金を使っている』というものだった。
それを聞いた時、この方法しかないと言った。
ギルベルトがヴァネッサと結婚したいと提案すると、ティンナール伯爵は激しく抵抗した。
しかし金をチラつかせれば、勝手にギルベルトの考えを解釈したのだろう。

『好きに使ってください。どうなっても構いませんから』

ティンナール伯爵がどんな意味で言っていたのか考えたくはなくてもわかるが、黙って従うしかなかった。

本来は持参金を持たせて嫁がせなければならないが、それもしたくないと言った。
恐らくしたくてもできないのだろう。
自分が優位に立っているとわかったせいか、ティンナール伯爵はガラリと態度を変えた。
もうヴァネッサの状態を隠す必要がないとわかった途端、厄介払いとばかりにギルベルトに語っていた。

(よくこの状態で嫁がせられたな。金以外、どうでもいいということか……)

けれどギルベルトの見立てでは極度の栄養失調。
肌の赤みや痒み、激しい咳も診察の結果、重い病気などではなかった。
ギルベルトの予想ではあるが、彼女をとりまく環境がかなり劣悪だったのではないだろうか。
それもかなり長期に渡り続いたものだ。
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